今日出逢った素晴らしいを

好感触の防犯カメラ

フェイズド・アレイ・レーダーや主翼の一体成型といった最新技術を日本が開発したことから、アメリカの老舗航空機メーカーが日本の技術力脅威論を議会に植え付け、あの圧力を生み出したのだった。
たしかにフェイズド・アレイ・レーダーの技術は、優れたものだった。
しかし実際の戦闘経験のない日本は、ハード・ウエアは開発できたものの、実戦のノウハウを必要とするソフト・ウエアは持っていなかった。
アメリカ側はそれを承知で足下を見てきたのである。
情報収集衛星の開発も、よく似たパターンだ。
日本は衛星開発については、資源探査衛星である。
また陸域観測技術衛星ALOSの開発にも着手し、順調に準備をすすめてきた。
宇宙からの地球観測データを解析し、活用するノウハウもある。
しかし、〝偵察衛星″を運用した経験はない。
こういうとき、衛星そのものであれ部分であれ、または運用に必要なソフト・ウェアであれアメリカから導入すれば、今後の日本の自主開発にはさまざまな制約がつけられるにちがいない情報収集衛星の寿命は、五年とされている。
しかし三、四年後には後継機を上げなければならないのである。
たとえ衛星の一部分であってもアメリカから導入すれば、その都度、さまざまな条件を押しっけられることになる。
その延長線上にTMD(戦域ミサイル防衛)構想も出てくるだろうし、日米の軍事的つながりはいっそう濃くなる。
もっとも、導入を推進している人たちのねらいは、そこにあるのかもしれない。
しかし世論は、受け入れるだろうか。
九八(平成十)年の十一月二十日、ロシア連邦南部カザフスタンのバイコヌール基地から、プロトン・ロケットにより「ザーリヤ」が打ち上げられた。
国際宇宙ステーションの「基本機能モジュール(FGB)」である。
全長的十三メートル、直径約四メートルで、大きさはHIHロケットが人工衛星を搭載するフェアリング部分とほとんどおなじだ。
これに大きな巽のような太陽電池パネルがつき、総重量は燃料も入れて約二十四トンにもなる。
ステムなどの機能が備わっている。
これが、地球を周回する高度約三九〇キロメートルの軌道上で宇宙ステーションを建設するときの、もっとも基本的な部分となる。
つづいて十二月の四日、アメリカのケープ・ケネディから、カーゴ・ベイに「ユニティー」を搭載したスペースシャトル「エンデバー号」が上がっていった。
「ユニティー」は、これから打ち上げられる各モジュールとの、最初の接合部であり、与圧通路となる「ノード1」だ。
全長は約五・五メートル、直径は四・六メートルで総重量は九トンになる。
十二月六日。
高度三九〇キロの軌道に上がったスペースシャトルは、ザーリヤに接近したところで、″静止″した。
もちろん、スペースシャトルとザーリヤの位置関係が一定したということであり、実際には両者は高速で飛行している。
ついでカーゴ・ベイ内のユニティーを、ロボット・アームでゆっくりと持ち上げる作業にかかった。
まずはヨコ位置に収納されていたユニティーをタテ位置にして、シャトルとの連絡通路となっている部分と接合する作業である。
いわばドッキング準備のためのドッキングだ。
十二月七日。
スペースシャトルは、ロボット・アームを伸ばしてザーリヤをキャッチすると、少しずつ引き寄せた。
そしてザーリヤは、ユニティーとドッキングに成功し、二つの無人宇宙船とスペースシャトルは一つになった。
十二月八目。
シャトルに搭乗していたミッション・スペシャリストが船外に出て、EVA1十二月九日。
軌道を上げるための、リブースト。
そして搭乗員たちのための、半日の休養。
十二月十日。
ミッション・スペシャリストの二度目の船外活動により、接合作業EVA-2がおこなわれた。
十二月十一日。
スペースシャトル内にいたミッション・スペシャリスト三人が、連絡通路をとおってユニティーに入る。
そして、ザーリヤとの接合部にあったハッチをはずして入っていった。
これが国際宇宙ステーション建設計画での、最初の船内作業だった。
十二月十三日。
ミッション・スペシャリストがシャトルから船外に出て、三度目の作業EV準備である。
十二月十四日。
スペースシャトルとの分離開始。
ユニティー/ザーリヤは、ついに宇宙ステーションのユニットの一つとなり、シャトルは離れていった。
なぜロシアが参加したか国際宇宙ステーションの建設は、三週間以上にわたるこうした一連の作業で、歴史的なスタートを切った。
しかしこのスタートは、かならずLもスムーズなものではなかった。
その背景を、ちょっとコミカルに描くと次のようになる。
文聾春秋社の編集部で、学生時代からの親友四人が集まり、夏休みの長期キャンプを計画していた。
リーダーは、アウトドアの経験が豊富なうえ、大きな四輪駆動車をもっている米山クン(アメリカ)である。
キャンプ地はちょっととおいが、米山クンが何度もいったことのある場所なので、みんな心配はしていなかった。
ところが世の中が急に不景気になり、夏休み直前になってボーナスが大幅に減額され、みんな財布の中身がさみしくなった。
これでは長期キャンプの予算も足りない。
それでもかれらは、ずっと楽しみにしてきた計画だから、いまさら変更はしたくない。
そこで、新しく購入するつもりだった道具の一部をあきらめたり、キャンプ地での魚釣りの日程を切りつめるなどした。
そんなとき米山クンが、ライバル会社から途中入社したばかりの露木クン(ロシア)の名前をあげた。
露木クンはクセのある男で付き合いにくいと評判だが、米山クン以上に長期キャンプの経験はあるし、大きな車ももっている。
米山クンと露木クンは古くからの知り合いで、犬猿の仲といってよいほどそりが合わなかったのだが、最近は口をきくようになっていた。
たしかに経験豊富な露木クンにも入ってもらえば、キャンプのノウハウを教えてもらえる。
それにクルマが二台になれば荷物もたくさん運べるし、ワリカンの予算も少なくなりそうだから結構ずくめだ。
露木クンも、前々から行きたいと思っていたのか、話はすぐにまとまった。
こうしてかれらは五人グループになったのだが、やっかいな問題がおきた。
露木クンが、計画の変更をいいだしたのだ。
集合場所はウチの前、キャンプ地までのルートも変える、荷物はオマエが背負えと、とにかくうるさい。
もともとへソ曲がりなとこがあるので、みんな「やっぱり……」という思いである。
しかし露木クンの家がちょっと遠いことや道路状況も考えれば、認めざるをえなかった。
ところが出発の直前になって、露木クンが、といい出した。
人のいい仲間たちは、妥協に妥協をかさねてやってきたが、だんだん心配になってきた。
そして、ほんとうにこれで長期キャンプなどできるんだろうかと不安をかかえながらも、とにかく旅に出たのだった。
これが宇宙ステーションをとりまく現在の情勢である。
全体の予算不足もさることながら、画で歴史的な第一歩となった「FGB」は、名称こそロシア語で「ザーリヤ」になっているが、アメリカのモジュールである。
アメリカの国家予算を投じてロシアで製作した、アメリカのモジュールだ。
それをロシアのバイコヌール基地からプロトン・ロケットで打ち上げるというややこしい第一歩を踏み出したことも、ロシア経済の凋落ぶりと宇宙ステーション計画の関係を象徴していた。
宇宙ステーション計画のはじまりは、一九八二(昭和五十七)年の五月だった。

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